オンデマンド印刷 【クジラの彼】アンソロジー冊子「LOVERS」再再版・完売
完売しました。有難うございました。

【LOVERS】より「クジラ乗りの落とし方」立ち読み

(前略)

――だって、合コンで出会った初日、ベッドインしたときから、相性抜群なんだもの。


合コンの見せゴマ要員として駆り出されたことを自覚してそつなく振舞うくせに、歯に衣着せぬ物言いをする。そのギャップが気になる男だった。
とにかく顔が好きで、話をしているうちに会話も好きだということに気づいて、別れがたくて自宅近くのファミレスで夜が明けるまで話し込んだ。
他愛もない話題で盛り上がりつつ、頭の端っこではお互い分かっていた。このままベッドインしたい。どちらもそう思っていることを。
でも聡子のほうからは言い出せない。出会った初日に家に招くなんて普段はしない。軽い女に見られるのはいやだった。すると、
「そろそろ出ようか」
 切り上げたのは冬原のほうだった。レシートを当然のように取り上げる。
 ああ、と内心がっかりしながら、なるべく顔に出さないように努めて、「そうだね」と聡子も席を立つ。
 割り勘にしようと言っても冬原は「大丈夫」と断った。レジであまりごねるのもみっともないので、素直に「ごちそうさまです」とお礼を言う。店を出がけに尋ねる。
「これからどうするの? 終電、とっくに終わっちゃってるけど」
冬原はなんでもないことのように答える。
「これからかあ。店を出てハグしてキスして、うちに連れ帰ってもらう。で、セックスするつもり」
 聡子は硬直した。
 まじまじと彼を見つめる。
「……本気?」
 真意が読めない。ポーカーフェイスは崩れていない。
「本気ですよ。俺はいたって」
「一回限りとか、あたし、いやなんだけど」
 嬉しいくせに、口からはそんな言葉が出ていた。
 冬原はちょっぴり微笑った。
「俺としても一回きりにするつもりはないんだけど。  できることなら長いお付き合いになるといいと思ってる。でもとりあえず、今はセックスしたい。今必死で自分を抑えてて結構辛い」
 人目がなければここで押し倒してるところだよ。物騒なことを言って冬原は肩をすくめた。
「……全然見えない。そういう風には」
「ありったけの理性掻き集めてるからねー。でももう限界に近い。頼むから俺を君んちまで持ち帰ってくれないかな」
 聡子は唇を噛んだ。このグレードの男が自分を口説いてくれてることがにわかには信じられない。
 でも不思議と遊びかもしれないとは思えないのだった。
「……寝ちゃうのがもったいないよ」
 困り果てて、聡子は言った。
「え?」
「恋愛の始まりのもろもろ期間、すっとばしてさっさと体の関係になっちゃうのが惜しい。あなたとなら、きっとすごく楽しいと思うのに」
 心の探りあいの時期。手を繋いだり、キスのタイミングを窺ったり。
 それらをすっとばしてベッドインするには、勿体無い相手だ。
「……あー、もうだめだ」
 冬原はなぜか天を仰いだ。
 聡子の手を把る。厚みがあって、熱い体温をしっかりと湛えていた。
「殺し文句その2発動。君ってクジラ乗り落とす天才だね。もうこれは陸(おか)にいるあいだに絶対にツバつけとかないといけない」
 ぶつぶつ呟いて、行くよ、とそのまま歩き出す。
「ふ、冬原くん?」
「遊びじゃない。俺、見かけこんなで誤解されやすいけどそんな簡単に女の子誘ったり付き合ったりしないよ。むしろ慎重なほう。そこは分かって」
「うん。分かってる」
 ルックスがいいだけに、それにつられて寄ってくる女にはきっちりガードを引きそうだ。
 でも、じゃああたしは? さっき店で「顔が好き」ってぬけぬけと言ってのけてしまったのに。
 そんな心を読んだように冬原が言う。
「君は特別。だからこんなに急いでる」
 言って先を急ぐ冬原の手を、聡子がくんと引いた。
 振り返る冬原に、
「あの、あたしのアパート、逆方向」
と告げると、ばつが悪そうに頭を掻いた。そのしぐさが可愛いくて、聡子から背伸びしてキスをした。
軽く、唇を奪う。
冬原は直立不動だった。
ややあって、
「―― 俺、持ち帰ってもらえるの」
と全く声色を変えずに訊いた。
 でも内心どきどきしているんだろうな。それが伝わって聡子は微笑んだ。
「そう。そしてツバつけとくの。あなたが海に帰る前に」
 冬原は一瞬素の顔を見せた。
 目を眇めるようにして笑い、
「海に帰るだなんて、君っていくつ殺し文句もってるの」と聡子の額に額をくっつけた。


つづきは 第一話 「クジラ乗りの落とし方」で




一話  クジラ乗りの落とし方(冬原×聡子「クジラの彼」)

二話  アナタノ笑顔(高科×絵里「ロールアウト」より)

三話  国防セックス(伸下×三池「国防レンアイ」より)

四話  婚約祝い  (夏木×望「有能な彼女」より)

五話  一年後   (清田×吉川「脱柵エレジー」より)

最終話 Don’t disturb(春名×光稀「ファイターパイロットの君」より)


※夜の部屋ではお目見えしていましたが、冊子に収録されるのが初めてのCPもいます(冬原×聡子 夏木×望 春名×光稀)。
完売した「ナニモイラナイ」、CDの「Anniversary」、オフ本「LESSON」「IS]とあちらこちらに収められていた「クジラ組」を一冊にスッキリまとめました。改稿は一話目だけです。あとは再録となるのでご注意ください。

活字でクジラの話を読みたいとおっしゃる方、「クジラの彼」に掲載されてある順で、それぞれのカップルの夜の話を読まれたいという方、この機会にぜひお求めください。
一部550円(送料別80円)・オンデマンド印刷限定でお送りします


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感想を戴きました。ありがとうございますv

「LOVERS届きました。ありがとうございました。もう一回原作を読み直して、比べてムフムフしてます。じつはオフ本の購入は初めてで。勇気出してよかったです」(東京都・Tさま)

「早速、読みかけの本を放り出して読みました。
ありがとうございました。堪能(*^_^*)です」(東京都・Mさま)

「もう、感激です。
特に伸下・三池と春名・光稀の二組。
思春期の息子に隠れて、毎日読んでおります」(東京都・Oさま)

「自衛隊三部作が好きで購入しましたが、それよりも
ロールアウトの二人にやられてしまいました。
ロールアウトは、やはり原作のその後が気になるところで
原作を補完させてもらった感じです。
現在製作中のロールアウト本がとても楽しみです」(静岡県・Kさま)

「光稀さん、まさに凶悪にかわいかったです。
たくさんのカップルがでてますから、お得感満載でした。
それぞれが、それぞれらしくて、十人十色というか、全方向アリ!というか
とても愛しい人たちでした。
素敵な本をありがとうございました 」(HN:たくねこさま)

「クジラ組も好きですが、高科×絵里もグッときちゃいました。 うんうん、そうだよね~って、かゆいところに手が届く!?お話ばかりで、オフ本初なんですがハマっちゃいそうです。 ありがとうございました。温泉三昧も楽しみにしてます」(埼玉県・おくださま)

「お目当ての冬聡は、まるで有川先生の続編を読んでいるような感じでした。ご本大切にします。ありがとうございました」(Kさま)

「先週末、受け取りました。
素敵な内容でとても嬉しかったですありがとうございました!
ロールアウトの二人のその後は特に嬉しかったです。というのも、ロールアウト、空の中はお話の舞台が地元でして、現実味を色々持ててしまうのです。それゆえ、ロールアウトの二人はどうやってお付き合いしていってくれるのか自分ではなかなか考えられなかったので安達様のお話が読めて大満足です!
ありがとうございました!」(O・Mさま)

「一気に読みふけりました
このままこの二人はどうなるの!ってところがすっきりして
幸せです
本編の中では冬聡が好きだったんですが
安達さんの本の中では伸下三池と清田吉川のCPが
今後楽しみで…(^^)」(O・Eさま)


  • 管理人@安達薫
  • URL
  • 2011/10/22 (Sat) 05:59:42

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